色素沈着は、日常遭遇する皮膚のトラブルの中で、比較的頻度が高くしかも治療に難渋するやっかいな疾患の1つです。解決に時間がかかるだけでなく、果たして解決さえするのかどうか先が見えず不安感を掻き立ててしまうことが良くあります。色素沈着は何故起こるのか、どのように対処したらよいのでしょうか。
色素沈着とは
色素沈着とは、皮膚の真皮内にメラニンが蓄積されている状態のことです。皮膚がある程度の期間様々な刺激を受け続けると、皮膚内の色素細胞(メラニン細胞)が増えてさらに活性化し、メラニンを多く産生することによって起こります。通常はある程度の時間が経過すれば自然に消えていくことが多いのですが、生じた後も不用意に紫外線の影響を受け続けるなど対策を怠るとシミや肌のくすみとして後に残ってしまうことがあります。
色素沈着の種類
-
1.炎症後の色素沈着
外傷後
主にすり傷や熱傷の後に起こる色素沈着です。傷や熱傷が比較的浅ければ一時的なもので終わることが多いですが、深い場合消えずに残ってしまうことがあります。逆に色素脱失といって、受傷部分が白く色が抜けてしまうこともあります。
湿疹・皮膚炎の後
様々な湿疹・皮膚炎が収束した後に起こる色素沈着です。ステロイド剤の外用で湿疹・皮膚炎が改善した後に見られると、ステロイド剤の副作用で色が黒くなったと誤解する人が多いのですが、これはあくまで炎症が治まった後の色素沈着であって、ステロイド剤の影響ではありません。ステロイド剤は色素細胞(メラニン細胞)の働きを弱めるため、むしろ色が白くなることの方が懸念されるのです。
湿疹・皮膚炎が一時的なものであれば、色素沈着は時間と共に消えていきますが、良くなったり悪くなったりを繰り返すなど慢性化するとシミや肌のくすみとして残ってしまうことがあるので注意が必要です。 -
2.反復される物理的刺激による色素沈着
肘や膝など常に動く、こすれるなど刺激を受けやすい部分は、色素沈着を起こしやすく黒ずむことがよくあります。同様に椅子に座る時間の長い人は臀部(坐骨部)が、またナイロン製の垢こすりなどを強くこすって使用する人は首の周りや背中が、色素沈着で黒くなることが多く見受けられます。
対策と治療
日本人を含め黄色人種は色素沈着を起こしやすい人種です。ですからある程度避けられない現実があります。シミやくすみとして後に残さないためには、軽い色素沈着であっても次のような対策を取ることが大事です。
-
1.徹底して紫外線を避ける
日焼け止めクリームの使用。傷跡には遮光テープの使用。日傘も有効。
-
2.ビタミンCの摂取
ビタミンCはメラニン色素の漂白作用があります。
-
3.原因となっている疾患を長引かせない
外傷や熱傷、湿疹・皮膚炎が長引くと、それだけ色素沈着がシミやくすみとして残ってしまう可能性が高くなります。医師の指示に従って早く治すのも重要です。
-
4.皮膚に強い刺激を与えない
ナイロンタオルなどで強くこするのは避けるべきです。特に首や背中が黒ずんでしまっている人は即刻中止すべきです。
すでにシミやくすみとして残ってしまった場合は、治療が困難である場合が多いのが現実です。ハイドロキノン(脱色剤)の外用やレーザー治療が有効なこともありますが確実ではありません。