皮膚には皮脂腺という付属器官が存在し、そこから皮脂が分泌され皮膚表面にでてきます。この皮脂は何の為に存在するのでしょうか。皮脂が少なかったら、あるいは多かったら、どんな影響があるのでしょうか。
皮脂の役割
皮脂腺から分泌された皮脂は、皮膚の表面に皮脂膜を作ります。この皮脂膜は、皮膚からの水分の蒸発を防ぎ、身体が乾燥するのを防いでいます(保湿機能)。また、皮脂は弱酸性であり皮膚表面を弱酸性に保つことで黄色ブドウ球菌など病原菌から皮膚を守り、さらにワックスのように皮膚表面をコーティングすることで、細菌やアレルギーの原因となるアレルゲン、汗などの刺激物の侵入を阻みます(バリヤー機能)。このように皮脂は健康な皮膚の維持に重要な役割を果たしているのです。
皮脂が不足すると
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1.乾燥する
皮脂が少ないと保湿機能が弱まって皮膚がカサカサと乾燥しやすくなります。進行すると痒くなり湿疹(皮脂欠乏性湿疹)を起こします。
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2.バリヤー機能の低下
乾燥によってバリヤー機能がうまく機能しなくなり、アレルゲンや刺激物の侵入を許し、皮膚炎が起きやすくなります。ですからアトピー性皮膚炎の症状が悪化しやすくなります。
皮脂が過剰になると
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1.ニキビ
過剰な皮脂が毛穴に詰まってアクネ菌の増殖を招き、ニキビの原因となります。
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2.脂漏性皮膚炎
皮脂の刺激で、鼻の周りや頭皮が赤くなりフケが増えるなどの脂漏性皮膚炎を起こします。これらは元来の脂性肌が原因となることもありますが、慢性的な疲労やストレス、野菜不足などの偏食によってホルモンなどの影響やビタミン不足で皮脂分泌が活発となり起こります。
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3.癜風(でんぷう)菌
皮膚の常在真菌(カビ)である癜風(でんぷう)菌は皮脂の多い環境を好み、過剰な皮脂と共同して脂漏性皮膚炎の悪化に一役かっていることが明らかになっております。
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4.ニキビダニ(デモデクス)
顔や頭皮の毛穴にはニキビダニ(デモデクス)というダニが寄生しています。寄生率はほぼ100%で誰にでも寄生しています。このニキビダニは皮脂を栄養にして生きています。通常は特に害はないのですが、過剰な皮脂に伴ってニキビダニが増殖すると化膿したニキビが増えるなどします。
このように皮脂は多くても少なくても良くないのです。皮脂が不足して皮膚が乾燥している場合は、皮脂を補うつもりで保湿クリームなどを使用するのが望ましく、バランスの取れた食事(緑黄色野菜や魚を多く)や十分な睡眠やストレス解消などにより過剰な皮脂分泌を抑えるのが大切です。