人の体からは様々なにおいが生じています。ほとんどのにおいは、皮膚から発生したものです。汗のにおい、足のにおい、腋(ワキ)のにおい、さらに加齢臭(中高年に特有のにおい)などはすべて皮膚から生じた汗や皮脂が原因となっています。においの程度には個人差がありますが、誰しもにおいを発しています。しかしながら自分のにおいは気付きにくいものです。ここでは、においはどのようにして発生するのか、そしてどのように対処すればよいのかを考えてみたいと思います。
汗のにおい
汗は皮膚にある汗線という組織から分泌されます。汗をかくという現象は、体温調節や血圧調節に重要な役割を果たしています。汗をかくことは、生きていくうえで必要不可欠なことなのです。しかし、汗はにおうのも事実です。
汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類があります。エクリン腺はほぼ全身に存在し、アポクリン腺は腋(ワキ)や陰部などに存在します。いずれから分泌される汗も、成分に違いはありますが基本的に無臭です。分泌された汗は、皮膚に存在する常在細菌によってにおいのある脂肪酸に分解され、においが発生するのです。
足のにおい
足に存在する汗腺はほとんどがエクリン腺です。長時間靴を履くなど、むれやすく細菌が増殖しやすい環境にあります。また足の裏は角質が厚く、垢が出やすいので、これを栄養にさらに細菌が増殖します。結果的に汗が多量の細菌によって分解され悪臭を発生します。
腋(ワキ)のにおい
腋(ワキ)にはエクリン腺に加えて、アポクリン腺が多く存在します。アポクリン腺から出る汗は、エクリン腺の汗と比較して、においの強い脂肪酸に分解されます。さらに腋(ワキ)は、湿潤でむれやすいので細菌の増殖を招いてしまいます。このため結果的に悪臭を発生します。
加齢臭(おやじくささ)
40歳を過ぎると皮脂の組成がそれまでと変わってきます。パルミトオレイン酸などの脂肪酸が皮脂に見られるようになり、これが酸化されてノネナールという物質が生じ、「おやじくささ」といわれている加齢臭の原因になるのです。これは性別に関係なく中高年にみられますが、女性に比べて皮脂の多い男性に顕著なようです。ただノネナールという物質だけが、「おやじくささ」すなわち加齢臭となっているわけではなく、整髪料やタバコのにおいなどが複合して作り上げているようです。
においはどのように対処すればよいのか
ほとんどのにおいは汗が原因です。しかも汗を分解する常在細菌がにおいを作り出すのですから、細菌の増殖を抑えるように、足や腋(ワキ)などを清潔にするのはもちろんのことです。また、足や腋(ワキ)などがむれないような工夫(靴下や下着を綿などの吸湿性のよいものにする、通勤時以外職場などではサンダルをはく、常に靴をはいている人はまめに靴下を取り替える等)が必要です。制汗剤を使用して汗を抑えるのも効果的です。
加齢臭に対しては、皮脂の酸化を防ぐために活性酸素の発生を抑えるのが効果的といわれています。それには、疲れやストレス(活性酸素を増やす)をためず、ビタミンCやベータカロチン(抗酸化作用がある)をより多く摂取することが大切です。