最近のトレンド「芳香族炭化水素受容体(AHR)と皮膚の関係 皮膚の老化と AHR の関係」の続きです。
<「くすみ」「シワ・たるみ」とAHRとの関係>
色・色調は、光が物体に反射して目に入りその光の波長が色として認識されます。
例えば青という色があるのではなく、青と認識される波長の光があるということです。
肌に光が当たると肌表面で反射されます。肌表面すなわち角質表面が、滑らかで角質が均一の厚さを保ち皮野・皮丘・皮溝すなわち肌理(キメ)が細かく整っている時、肌表面で光は効率よく反射します。このような場合美しい肌として認識されます。
すべての光が肌で反射されるだけでなく、肌深部にも光が浸透します。この肌深部に浸透した光は、角質、表皮、真皮、皮下組織などで散乱を繰り返しながら伝搬し、外部へ出ます。角質だけでなく真皮や皮下組織が整っていないと美しい肌とは認識されません。
角質の表面が荒れていたり、角質の厚さが均一でなかったり、肌理(キメ)が整っていなかったり、真皮や皮下組織が不均一(「シワ・たるみ」コラーゲン線維の減少や乱れ)であったりすると、肌表面での光は乱反射を来たし肌深部でも乱反射が起こります。結果的に肌の輝度が低下し、これが「くすみ」として認識されます。
すなわち「くすみ」とは、肌の表面・角層での光の乱反射、及び肌深部からの光の乱反射のことです。
表皮において角質細胞の増殖・分化をコントロールしているしているのが、主としてアルドケト還元酵素IC3(AKRIC3)です。この酵素は環境因子などで活性化された芳香族炭化水素受容体(AHR)によって作用が活発になり、角質細胞の正常の分化が乱れる(肌理・キメが乱れる)ことになります。結果として「くすみ」となります。
表皮の下、「シワ・たるみ」の原因である真皮層の菲薄化やコラーゲン線維の乱れは、コラーゲンを分解する酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-1)によって誘導されます。この酵素は環境因子(この場合は紫外線UVA)による芳香族炭化水素受容体(AHR)の活性化の影響を受けます。結果的に真皮や皮下組織の不均一化につながり「くすみ」「シワ・たるみ」のさらなる進行の原因となります。
このように肌の老化である「くすみ」「シワ・たるみ」は芳香族炭化水素受容体(AHR)の影響を受けているのです。
続く
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<26/05/2024 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>