「赤ら顔」と言っても色々あります。
「皮膚疾患としての赤ら顔」から「生まれつきの赤ら顔」まで様々です。
赤ら顔を来たす皮膚疾患として第1に「酒さ」があります。
酒さとは慢性炎症性皮膚疾患で、①毛細血管の拡張による赤ら顔②毛穴周辺に起こる炎症による丘疹、を特徴とします。
白人に多いですが、意外と日本人にも思われている以上に多く見られます。
難治性で、良くなったり悪化したりを繰り返す傾向が強いです。
ただ赤ら顔ならすべて酒さというわけではありません。
酒さのようで酒さでない、実は酒さだった、など鑑別が困難な場合に多く出くわします。
鑑別の必要な赤ら顔の原因を考察してみました。
一次刺激性接触性皮膚炎:刺激の強い物質などに触れて起こる接触性皮膚炎(かぶれ)です。化学物質(油・強酸・強アルカリ等)や植物、ゴム、金属、洗剤、化粧品など。本来は激しい炎症が起こるため酒さとの鑑別が必要になることは少ないですが、日常的に使用している洗剤や化粧品などが原因(化粧水がしみる等)で持続的に炎症が顔に起こっていると赤ら顔として認識されやすい傾向があります。
アレルギー性接触性皮膚炎:アレルギー反応を起こす原因となる物質が皮膚内に取り込まれ免疫応答が起こり生じる接触性皮膚炎です。化粧品、消毒液、点眼薬、湿布、金属、植物などが原因となります。これらも水泡形成があったり比較的激しい炎症を伴うことが多いですが、日常的に使用する化粧品や点眼薬の場合、赤ら顔を呈することがあります。
花粉症に伴う皮膚炎(花粉症皮膚炎):空気伝搬性接触性皮膚炎、空気暴露性接触性皮膚炎などともいわれます。主に空中を舞う花粉が原因となる皮膚炎です。顔、特に目の周囲が赤くなり、時に瞼がむくんだりします。赤ら顔として認識されることがあります。
脂漏性皮膚炎:鼻の周囲の頬や眉間などのいわゆる脂漏部位に起こる皮膚炎です。炎症で赤くなります。最も酒さと鑑別が必要な皮膚炎です。軽度の脂漏性皮膚炎は非常に酒さとの鑑別が困難な場合が多いです。
アトピー性皮膚炎:軽度のアトピー性皮膚炎の場合、特に顔に限定的な場合は赤ら顔を呈します。
以上が大変重要な酒さとの鑑別が必要な疾患ですが、現実はこれらと合併している場合が非常に多いことです。
これらの皮膚疾患にマスクされて酒さが見落とされる場合があり得るのです。
最近では、酒さの治療にメトロニダゾール(ロゼックスゲル)が認可されて治療の幅が広がりましたが、画一的な治療では困難な場合が多いのも現実です。
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<27/10/2023 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>