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新たに分かったアトピー性皮膚炎の痒みの原因。ぺリオスチンについて。

アトピー性皮膚炎の痒みの原因であるとか新たな新薬であるとか、いろいろ新たな知見が散見されます。

痒みを起こす体内物質の代表的なものは、ヒスタミンです。
それ以外に、リンパ球の一種であるT細胞の仲間のTh2細胞から産生される炎症性サイトカインと表皮角化細胞から産生される炎症性サイトカインがあります。
皮膚に炎症が起こると、Th2細胞から、IL(インターロイキン)-31、IL-4、IL-13、IL-17が痒みを誘導するサイトカインとして産生されます。
一方、表皮角化細胞からTSLP(thymic stromal lymphopoietin)が産生され痒みを引き起こします。
その他、痒みを起こす物質に、PAR2(protease-activated receptor2)、Substance P、MRGPR(mas-related G protein-coupled receptor)などがあります。
最近新たに、ぺリオスチンという物質がアトピー性皮膚炎の痒みに大きく関わっていることが分かってきました。

ペリオスチンは骨の生成に関わるたんぱく質として知られていましたが、アトピー性皮膚炎で生じる強い痒みと深く関わっていることが分かりました。
ペリオスチンは直接知覚神経を刺激して強い痒みを誘発し皮膚を引っ掻く行動を起こさせます。

またペリオスチンはアトピー性皮膚炎の炎症の悪化・遷延化とも関わっています。
ハウスダストや花粉などアレルギーを引き起こすアレルゲンが皮膚に接触し侵入すると、リンパ球の一種であるTh2細胞が活性化されます。
するとこの細胞から痒みを誘発する炎症性サイトカインであるIL-4・IL-13が産生されます。
IL-4・IL-13は皮膚内の線維芽細胞に作用しペリオスチンの産生を促します。
ペリオスチンは、表皮角化細胞の細胞膜に発現しているインテグリンというたんぱく質に結合します。
すると痒みを起こすTSLPなどの炎症性サイトカインが産生されます。
産生されたTSLPは再びTh2細胞を刺激・活性化します。
このようにペリオスチンを中心とした皮膚炎の増幅と遷延を繰り返すサイクルが存在するのです。

このペリオスチンとインテグリンとの結合を阻害する化合物であるCP4715(元々は抗血栓薬として開発された)が、ペリオスチンの作用を抑えることがわかりアトピー性皮膚炎の治療に有効である可能性が示唆されました。炎症の悪化の悪循環を断ち痒みを抑える効果が期待できそうです。
ただ実用化まではもう少しかかるようです。
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<23/02/2023 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>