「お肌の バリア機能 と スキンケア の関係 その④」の続きです。
「お肌の バリア機能 と スキンケア の関係」に関して その①~その④ に渡って考察してきましたが、以上のことを基に日常のスキンケアはどうあるべきかを考えます。
(1) 保湿の重要性
季節的な要因や加齢など様々な要因でお肌が乾燥すると、透過性バリア機能が障害されます。透過性バリア機能の回復能力が低下しているアトピー性皮膚炎の方や高齢者の場合、さらに乾燥の影響を受けやすく悪循環に陥ります。保湿によって乾燥状態を改善しさらなる乾燥を予防することで、透過性バリア機能の低下を防ぎさらには回復につなげることができます。
(2) 不必要にお肌を擦ったり赴くままに掻いたりしない
強い掻破行動で透過性バリア機能が破壊されるだけでなく「タイプ2炎症」が惹起され角質細胞間脂質の合成を低下させます。結果的に透過性バリア機能が損なわれます。さらにお肌表面のpHが上昇することで抗菌バリア機能も障害されます。日頃からお肌を愛護的に扱うこと、痒いからと言って強く掻かないよう心掛けることは大切です。
(3) 入浴、お肌の洗浄の大切さ
お肌に異物、特にアレルゲンとなるダニや細菌、花粉などは皮膚に付着することで機能性バリア機能を低下させます。さらに炎症が起こり角質細胞間脂質の合成を低下させバリア機能をさらに低下させます。皮膚に付着したこれらアレルゲンを洗い流すことで影響を減らすことが可能です。入浴や洗顔は大切なことです。ただこの際はあくまでも愛護的に擦らないように気を付けるのが重要です。
(4) ストレスを溜めないのも大切なスキンケア
心的ストレスは副腎皮質からのステロイド産生が誘導されます。これにより角質細胞間脂質の合成が低下し機能性バリア機能が障害されます。また抗菌バリア機能も低下します。仕事や対人関係、さらにはコロナ禍やウクライナ情勢などストレスの種は尽きません。やはり気分転換や適度な運動が一番の良薬と言えるでしょう。
(5) 湿疹・皮膚炎の治療を怠らない
炎症が皮膚に存在するだけで透過性バリア機能及び抗菌バリア機能が阻害されます。アトピー性皮膚炎をはじめ様々な湿疹・皮膚炎を放置せず治療することはバリア機能の維持にとって重要です。
(6) 外用薬を目的に応じて上手に使う
炎症を速やかに抑えることに長けているステロイド外用薬ですが、改善した後は漸次ランクを下げるなど工夫するとよりバリア機能の維持に役立ちます。またアトピー性皮膚炎の場合、タクロリムス外用薬(プロトピック軟膏)やデルゴシチニブ外用薬(コレクチム軟膏)などを併用することはよりバリア機能の正常化及び維持亢進につながります。
以上のように特にお肌にトラブルを抱えていない時も皮膚のバリア機能の維持にスキンケアは大切です。特にアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患の場合、皮膚に存在する炎症を治療し軽減することが重要です。