お肌のバリア機能には主に3種類の機能が備わっていることは、以前4月29日のブログ<お肌の バリア機能 と スキンケア の関係 その① バリア機能って何? >にてお話ししました。
①透過性バリア機能 ②抗菌バリア機能 ③免疫学的バリア機能です。
これら全てのバリア機能が機能している状態は、お肌の健康の維持につながります。
これら皮膚バリア機能を阻害するなど影響を与える因子を考えることで、必要な日常のスキンケアのヒントを読み解くことができます。
A : 乾燥、湿度の低下
季節的な要因や加齢に伴う乾燥肌傾向の進行などでお肌の角質が含んでいる水分(角質水分量)が減ると、角質の柔軟性が損なわれたりバリア機能を維持するために必要な酵素の活性が低下したりすると言われています。その結果透過性バリア機能が障害されます。
アトピー性皮膚炎の方や高齢者など透過性バリア機能の回復能力が低下している場合、乾燥や湿度の低下の影響をより受けやすいとされています。また高齢者の皮膚では透過性バリア機能の低下を補うために角質が厚くなっています。
さらに角質水分量の低下は、皮膚における炎症を誘発することが分かっています。
B : 機械的刺激
ついつい痒いとお肌を掻いてしまいます。時には掻きまくって傷だらけ血だらけになり朝起きたらびっくりすることも。
機械的刺激によるバリア機能破壊の一番の原因は掻破です。軽度の掻破行動だけであれば炎症性サイトカインの産生・分泌によりバリア機能の修復が促されるとされていますが、強い掻破行動が行われると炎症が起きます。この時起こる炎症は「タイプ2炎症」と言われ、リンパ球の一種である2型T細胞が過剰に活性化して起こります。本来寄生虫に対する生体防御反応として機能するものですが、一方でアレルギー性炎症の主な原因ともなっています。お肌の場合アトピー性皮膚炎との関りが指摘されています。
この「タイプ2炎症」が起こると、バリア機能の重要な担い手である角質細胞間脂質のセラミドの合成を低下させます。また掻破によるバリア機能の破壊時に角層のpHが上昇(アルカリ性に傾く)し、セラミド合成に必要な酵素の活性を阻害しセラミドが減少します。さらにお肌に有害な黄色ブドウ球菌の増殖を助長します。結果的に透過性バリア機能と抗菌バリア機能を低下させます。
続く
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<16/06/2022 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>