痒みを科学する。 その③  | 札幌市中央区の皮膚科なら宮の森スキンケア診療室

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痒みを科学する。 その③ 

皮膚に異物が付着したり皮膚を通して侵入したりした時に、皮膚内で痒みを引き起こす物質が産生されます。
その物質は大きく分けて、二つに大別されます。

「ヒスタミンか、ヒスタミン以外か」

ヒスタミン以外の物質には、リンパ球の一種であるT細胞の仲間のTh2細胞から産生される炎症性サイトカインと表皮角化細胞から産生される炎症性サイトカインがあります。

皮膚に炎症が起こると、Th2細胞から、IL-31(インターロイキン31)、IL-4、IL-13、IL-17が痒みを誘導するサイトカインとして産生されます。
 IL-31の受容体(IL-31を受け取って痒み刺激を伝達する)は痒みを伝える末梢神経上に発現しており、特にアトピー性皮膚炎や痒疹で発生する痒みに関わっていると考えらっれています。
 IL-4、IL-13の受容体(これらをを受け取って痒み刺激を伝達する)も痒みを伝える末梢神経上に発現しており、痒みを引き起こしていると報告されています。
 IL-31は急性期の、一方のIL-4、IL-13は慢性期の痒みに関与していると考えられているようです。
 IL-17は、関節リウマチ、喘息、全身性エリテマトーデスなど、免疫/自己免疫と関連した多くの疾患と関連付けられており、皮膚疾患では尋常性乾癬との関連性が指摘されています。IL-17も、痒みを伝える末梢神経を刺激することが知られています。

T細胞から産生される炎症性サイトカインの他に、表皮角化細胞から産生されるTSLP(thymic stromal lymphopoietin)も痒みを引き起こす物質であることが分かっています。これはアトピー性皮膚炎の方の皮膚に高発現していることが知られています。

その他、痒みを起こす物質に、PAR2(protease-activated receptor2)、Substance P、MRGPR(mas-related G protein-coupled receptor)などがあります。
 PAR2(protease-activated receptor2)は、表皮角化細胞や痒みを感じる末梢神経に発現しています。これが刺激されると痒みを惹起します。
 Substance Pは、神経の末端から放出される神経ペプチド(アミノ酸がペプチド結合で結合した化合物)の一種です。皮膚炎や痒みの増幅に関与することが分かっています。
 MRGPR(mas-related G protein-coupled receptor)は細胞膜上の受容体で、肥満細胞(ヒスタミンを産出する)と神経細胞上に発現しています。これによる痒みは立ち上がりが遅く持続する痒みと言われています。

以上のヒスタミン以外の痒み物質をいかにして抑えるか、すでに実用化されているものもありますが、目下研究中でありその成果が待たれます。
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<09/03/2022 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>