痒い所を掻くととても気持ちが良い。そんな経験は誰にでもあるはずです。
痒みを我慢するより、気持ちが良いのでついつい手が出て掻いてしまう。結果的に痒みがさらに悪化してしまいます。
痒い所を掻くと気持ちが良いのは何故なのか。調べてみました。
fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使って、掻破による快感が生じているときの脳活動を計測する研究が行われています。fMRI(機能的磁気共鳴画像法)とは、磁気共鳴画像 (MRI)を用いて生体の脳や脊髄を一定時間連続的に撮像し、脳活動と相関するMRI信号の変動を非侵襲的に計測する技術のことです。
その結果、掻破による快感を感じている時は、脳内の「線条体」「島皮質」「運動関連領野」などで活動が亢進していることが分かりました。これらの領域は”欲求やモチベーションに関係する領域”で、気持ち良いのでもっと掻きたい、という積極的な心的状態につながると考えられています。
また「痒みを伴う皮膚疾患を抱えていない群」と「慢性的な痒みを伴う皮膚疾患を抱えている群」とを比較した研究も行われています。
前者では、痒みのない皮膚を掻いてもそれほど気持ち良くならなかったようです。
後者では、痒くても痒くなくても皮膚を掻くと、強い気持ち良さを感じるとの結果が出ており、さらにこの時に線条体や運動関連領野などの”欲求やモチベーションに関係する領域”の活動が亢進していることが明らかになっているようです。すなわち、掻けば掻くほど気持ち良くなり、さらにそれを積極的に持続するように脳が強いシグナルを発生させ、ついつい掻き過ぎてしまう結果に陥る可能性を示唆しています。
自分も乾燥して痒い部分を我慢できずに搔きまくってしまい、あ~気持ち良かったすっきりした、となり、後で悪化した部分を見て後悔することが多々あります。でも搔いてしまうのは意志が弱いからだと思っていましたが、脳の方に問題があり、掻け!もっと掻け!そうすれば気持ち良いぞ!と誘惑しているのでは我慢するのも大変ですね。
これからは、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤で痒みを抑えるのも大切ですが、脳科学的なアプローチも痒みの治療に重要になるのではないでしょうか。
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<16/11/2021 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>