保湿剤は、作用機序からモイスチャライザーとエモリエントの2つに分類されます。
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モイスチャライザーとは、ヒューメクタントという「肌に水分を与え乾燥から守る吸湿性の高い水溶性の成分」を含み、直接的に水分を角層に供給する作用のある製剤を言います。モイスチャライザーに使用されるヒューメクタントには次のようなものがあります。
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コラーゲン:魚の骨や皮、ウロコからつくられます。繊維状の蛋白質で、人体にも多く存在します(肌、骨、関節など)。弾力性や柔軟性を持ち化粧水などのベース成分として利用されます。
ヒアルロン酸Na:ニワトリのとさかからつくられます。現在はほとんどが微生物による発酵生産バイオテクノロジーによって合成されています。分子量が大きく保水力が高い特徴があります。基礎化粧品に配合され肌の保護膜を作り効果を発揮します。
グリセリン:パーム油やヤシ油などの天然油脂からつくられます。多価アルコールの一種です。トロッとした粘性を持ちクリームなどの質感を出す目的で使われます。ヒアルロン酸Naやコラーゲンと組み合わせることでさらに高い保湿効果が期待されます。
ジプロピレングリコール(DPG):保湿成分である多価アルコールの一種であるプロピレングリコール(PG)をより低刺激にしたものです。粘性が高い特徴があります。他の成分が溶けやすいため多くの化粧品に使われています。
セラミド:細胞間脂質の一つ。高い保湿能を有しています。肌のバリア機能を支えています。セラミドには7種類ありますが、中でもセラミドEOP(バリア機能形成)、セラミドNG(高い保水力)、セラミドNP(水分保持の持続力が高い)、セラミドAP(ピーリング効果により表皮のターンオーバーを正常化する)が保湿剤に利用されます。
ヘパリン類似物質:構造的に多くの親水基(水分と結合しやすい部分)を持っているため、角層内で水分と結合し、水分を保持します。
尿素:構造的に多くの親水基(水分と結合しやすい部分)を持っているため、角層内で水分と結合し、水分を保持します。
ポリオクタニウム:リピジュアともいわれ、ヒアルロン酸の2倍の保湿力があります。人体の細胞膜の構成にかかわるリン脂質をモデルに開発されました。水洗いの後約1時間経過しても保湿力を維持する特徴があります。安全性が高いといわれています。
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以上のような直接的に角質に水分増加作用をもたらすヒューメクタントと、クリームやローションなどの基剤とともに製剤全体としてその保湿作用を発揮します。
続く
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<11/09/2019 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>