どんな肌が美しい肌なのか。これを判断するのは他でもない色覚を含めた視覚です。
まず人の色覚について押えておかないと理解できません。
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一般的に哺乳類は2色型色覚を有しています。色の3要素RGB(Red赤 Green緑 Blue青)のうち2種類のみ判断可能です。しかし哺乳類の中で人の属する霊長類だけが3色型色覚を有し、赤・緑・青の識別が可能です。これは、緑で覆われた野山で赤やオレンジの木の実を見つけやすくなるため3色型の色覚を獲得した、と言われているようです。しかし一方で、進化理論神経科学者マーク・チャンギージー(Mark Changizi)は著書「人の目、驚異の進化」の中で、「人の色覚は顔色を読むために進化した」と説明しています。例えばコミュニケーションの手段の一つとして”仲間の顔色を読み”、また”健康状態が肌の色(顔色)に反映される”ことからシグナルとして色覚を利用し進化したのでは、と述べています。
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ではこのような人の色覚の上で、美しい肌とはどんな肌でしょうか。
肌に光が当たると肌表面で反射されます。肌表面すなわち角質表面が、滑らかで角質が均一の厚さを保ち皮野・皮丘・皮溝すなわち肌理(キメ)が細かく整っている時、肌表面で光は効率よく反射します。
すべての光が肌で反射されるだけでなく、肌深部にも光が浸透します。この肌深部に浸透した光は、角質、表皮、真皮、皮下組織などで散乱を繰り返しながら伝搬し、外部へ出ます。肌深部には、表皮のメラニンと真皮・皮下組織における血液のヘモグロビンがあります。肌の色はこれらメラニンとヘモグロビンの2つの因子で決まります。これは万国共通の認識です。ヘモグロビンは酸素で飽和されると鮮やかな赤色を呈し、酸素が少なくなると黒っぽくなります。すなわち血流が豊富でしかも酸素飽和度が高いと肌深部から反射された光りは赤みを帯びます。一方メラニンが多いと吸収される光が多く、内部のヘモグロビンの赤みが反映されにくくなります。
以上のように、肌の色は、肌表面の反射光とメラニン・ヘモグロビンが反映した肌深部からの反射光により決まります。
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まとめると、肌表面の肌理が整い、余剰なメラニンが少なく(くすみやシミが少ない)、肌の血流が豊富で酸素が十分に行きわたっている時、赤みを帯びた健康的な美しい肌が演出されるのです。この赤味の濃淡を色覚で認知するには先に述べた3色型色覚が必要になってきます。
すなわち見た目の美しい肌とは、色や肌の質感だけでなく健康な人の肌であると色覚を通して認識される肌のことを言うのです。
肌を余念なくお手入れすることも大切ですが、己の健康を維持することも美しい肌の維持獲得につながるのです。
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<09/01/2018 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>
見た目の美しい肌とは (皮膚科情報)