平成10年2月に当院が開院し今年で20年目になります。10年一昔と言いますが、もう二昔になりました。開業医になる前は、大学の医局に属し、地方に赴任したり研究に明け暮れしておりました。その頃のDutyは学会で研究成果を発表したり症例報告をしたり、論文を書いたりすることでした。今はもっぱら学会に出席するだけになり発表することはほとんどありません。
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どんな年齢であってもどんな環境であってもどんな職業であっても、今の世の中ではストレスから逃れられません。まさにストレス社会です。
しかしそんなストレスも過度に蓄積し自ら処理しきれなくなると、抑うつ気分になり自律神経も失調しイライラ・緊張状態となります。これを東洋医学的に「肝気欝結(かんきうつけつ)」と言います。さらに進行すると頭に常に血が上った状態で怒りを感じるようになり、これを「心肝火旺(しんかんかおう)」と言います。
このようなストレスにより心身に変調を来すと、アレルギー症状が悪化し、ウイルス・細菌に対する免疫が低下することがわかっています。実際心当たりのある人も多いと思います。ストレスでアトピー性皮膚炎が悪化したり、痛いおできが出たり、ニキビが増えたり、唇にヘルペスが出たり、帯状疱疹になったり。
もちろん、ストレスによる抑うつや自律神経の失調などに対し、西洋医学的なアプローチとして抗うつ薬や精神安定剤が用いられます(当院では専門外ですので処方することはありません)が、東洋医学的にこのような肝気欝結に対し、疏肝解欝(そかんかいうつ)といって””気の巡りを整え欝を開放する””ような漢方薬によってこれらの症状の改善が期待できます。
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肝気欝結を治す疏肝解欝の作用がある生薬(柴胡、川芎、半夏など)の含まれる方剤(抑肝散や加味逍遥散など)や心肝火旺を治す清熱剤などにより、ストレスが原因と思われるアレルギー症状の悪化や難治性の皮膚感染性疾患が抑えられた症例を経験し、毎月参加している漢方診療の勉強会で発表する機会がありました。
学会で発表したわけではありませんが、プレゼンテーションするのは久しぶりでした。しかしながら、それに際して詳しく文献を調べ、生薬に関して掘り下げて勉強するなど、かなり有意義でした。
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開院して20年目になりますが、まだまだ勉強が足りないな、と感じたのでした。
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<20/02/2017 札幌市 中央区 皮膚科・形成外科 宮の森スキンケア診療室>
ストレスによる抑うつ・イライラと皮膚の関係 (漢方・皮膚科情報)