2月に入りましたが、まだまだ寒く乾燥した日が続きます。お肌も乾燥との戦いです。
やはりお肌の健康にとって、保湿は最も欠かせません。
保湿剤や基礎化粧品などで保湿するのは重要ですが、生まれ備わった保湿剤である皮脂を忘れてはいけません。
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皮脂と言えば、「ニキビの原因だ」「皮脂が多いとテカって化粧のりが悪くなる」「オイリーでオヤジくさい」など悪いイメージが先行します。しかし一方で皮脂は、保湿はもちろん皮膚表面を弱酸性に保ち有害な細菌の増殖を抑えるなど、外界から身を守る役割の一端を担っています。
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皮脂は毛穴にある皮脂腺という器官から分泌され、皮膚表面にワックスのように広がります。その成分はトリグルセライドやスクワランなどで構成されています。
アセビアマウスという先天的に皮脂腺のないマウスがいます。このマウスの皮膚は乾燥してガサガサしています。古くから効果の高い保湿剤として使用されてきた”グリセリン”をこのマウスの皮膚に塗ると、皮膚が正常化するのです。皮脂の成分であるトリグルセライドは、皮膚の表面に存在するリパーゼという酵素によって脂肪酸と”グリセリン”に分解されます。このことから、皮脂そのものが保湿剤であると同時に高い保湿能力を持った”グリセリン”の供給源でもあることがわかります。
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さらに皮脂は油ですから水を弾きます。皮脂成分を哺乳類の中で比較すると、ネズミもイヌもネコもウマもサルも、皮脂腺からコレステロールを分泌しています。そして彼らは”スクワラン”を分泌していません。ところが人間はコレステロールではなく、もっぱら”スクワラン”を分泌しています。構造式上、コレステロールは水になじみやすいのですが、”スクワラン”は水を弾くウォータープルーフの作用が強いのです。これは有毛の哺乳類は毛が体を守っているのに対して、ほとんど毛のない人間の皮膚は、水を弾くことによって外からの刺激から守っていると考えられます。
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健康な肌とは、「皮脂が程よく分泌され、皮脂そしてグリセリンにより潤いを保ち、そして豊富なスクワランで水を弾くみずみずしいお肌」のことです。”水も弾くみずみずしいお肌”は褒め言葉ですが、これには意味があるのです。
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<08/02/2017 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>
人間の皮脂はウォータープルーフ。 ”水も弾くみずみずしいお肌”には意味がある。 (皮膚科情報)