糖質制限ダイエット、炭水化物抜きダイエットなど、最近いろいろなダイエット方法をよく耳にします。これらには自分は興味ないのですが、健康のためになると言われてきた「塩分摂取の制限」に関して懐疑的な話が出てきました。
塩分を摂りすぎると高血圧の原因になるとか、心臓や腎臓の機能が低下するなど、これまではとにかく塩分を控えましょうと言うのが主流でした。しかしながら一方で、熱中症予防の観点から、「脱水に陥りやすい高齢者は特に、こまめに水分と塩分を摂るように」と言われます。高齢者には高血圧や腎臓病の方が多いはずなのに、熱中症の話になると相反する指導がなされます。塩分の正しい摂り方って良くわかりません。
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WHO(世界保健機構)は、「世界的に一日の塩分摂取量を5グラム未満にする」よう目標を掲げています。これはかなりの減塩です。塩分を制限するのは健康に良いという考えが定着していることを意味しています。確かに日本でも、戦後の減塩の推奨で、高血圧や脳卒中が減ったという現実があります。
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しかし2011年に”JAMA(アメリカ医師会雑誌)”という医学雑誌に、「高血圧の患者さんに対して、一日10グラムを下回る塩分制限はかえって有害である可能性がある」との論文が発表されました。
さらに、2014年には、”The New England Journal of Medicine”という医学雑誌に、「食塩摂取量が、約7.6グラムから15.2グラムの間が、最も死亡と心血管疾患の発症リスクが低く、それより高くても低くても、リスクが増加することが確認された」と発表されました。
そしてさらには、2016年5月に”Lancet”というイギリスの医学雑誌に、「高血圧の患者さんでは、塩分の摂取が増えるとともに血圧は上昇し、食塩の摂取量で10~15グラムくらいを超えると、動脈硬化の病気のリスクは増加する。しかし、10グラムより少ないとその傾向ははっきりしなくなり、7.5グラムくらいより少ないと、かえって病気は増えてしまう」、「血圧正常者では、塩分は15グラムを超えても動脈硬化の病気は増えず、7.5グラムより制限すると、明らかに病気は増加していた」と発表しています。
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どうやら塩分摂取に関して、全く今までと状況が変わってきました。WHOの目標はいったい?
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ただ注意して頂きたいのは、高血圧以外にも、塩分摂取が関わる病気に腎臓病や心臓病があるわけで、血圧が正常だからと言って多めに塩分を摂っても安心と言うわけではありません。それに自分の一日の塩分摂取量はどの位なのか、実際良くわからないのが現実です。過度な制限は必要ないようですが、しょっぱいものを食べすぎるのは今まで通り控えた方が良さそうです。
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少なくとも「塩分制限は健康に良い」との考えは、変わって行く節目を迎えたような気がします。
<26/06/2016 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>
本当に減塩は健康に良い?わかりにくい塩分摂取の適量。