人類は手を使うことで進化してきました。日常生活の中で、特に意識はしていなくても常に手を使っています。手を使うことで様々な刺激を手に受け、それによって起こる湿疹が「手湿疹」です。
しかしながらその原因と病態は、個人によってまちまちで多種多様です。塗り薬などで治療することは重要ですが、まずは原因と病態を知ることが大切です。
- ①刺激性接触皮膚炎
手を使うことによって受けるいろいろな刺激(物理的・化学的刺激)が、手の表皮の角化細胞に直接ダメージを与えて起こります。
手湿疹の”約7割”を占めます。”水仕事”がその代表。それ以外に、陶芸、楽器、庭仕事なども原因となります。
利き手の指先や手掌、爪周囲に好発し、強い痒みを伴います。 - ②アレルギー性接触皮膚炎
手に触れる化学物質などのアレルゲンに対するアレルギー反応によって起こる皮膚炎です。
私たちは、家事や職業、趣味を通して様々な化学物質に触れます。ゴムやビニル手袋、アクセサリーやスマートフォンなどの金属部分等が原因になることがあります。美容師さんに多く見られるヘアダイ・染毛剤(パラフェニレンジアミンなど)による手湿疹もこれに当たります。
アレルゲンが接触する指先や母指丘、手背側が好発部位し、強い痒みを伴います。 - ③アトピー型手湿疹
アトピー性皮膚炎をお持ちの方は、皮膚のバリア機能が低下している場合が多いため、①の刺激性接触性皮膚炎型の手湿疹を起こしやすく、また増悪しやすい傾向があります。
手首から手背、指背などに好発し、慢性化した(皮膚のシワが目立ち厚くなっている)状態が多いです。 - ④蛋白質接触皮膚炎
皮膚に触れたタンパク質抗原に対するアレルギー反応を起こし生じます。アトピー素因やバリア機能低下により、”タンパク抗原に対する感作が成立”し、これにより起こるのではと考えられています。食品を扱う職業の人に多い傾向があります。ソバ打ちでソバが原因の手湿疹や、パン粉を使うことによる小麦が原因の手湿疹など。 - ⑤混合型
以上の病態が混在したものです。
角質に水分を保つ保湿成分には、皮脂、角質細胞間脂質、天然保湿因子などがあります。
手、特に手掌には毛穴がないため皮脂を作る皮脂腺がありません。そのため、他の部位の皮膚と比べると乾燥しやすく、バリア機能が破綻し症状が進行しやすい傾向があります。
また破綻したバリア機能のために様々なアレルゲンが侵入し、感作を起こし、アレルギーが成立してしまうことがあるのです。