虫に刺されてもいないのに、虫に刺されたかの様な痒い膨疹(ふくれて盛り上がった皮疹)が出たり引っ込んだりする。とにかく痒くてつらく、掻けば掻くほどひどくなる。こんな状態を蕁麻疹と言います。何らかの原因で、体内の肥満細胞(アレルギーなど炎症や免疫と関連する細胞)からヒスタミンという物質が分泌されて膨疹(蕁麻疹)が引き起こされるのです。
蕁麻疹の種類
蕁麻疹は、大きく分けて急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹に分けられます。急性蕁麻疹は、突然発症し、約1~2週間でおさまります。一方、決まった原因のわからないまま毎日のように膨疹の出没を繰り返し、この状態が1ヶ月以上続くものを慢性蕁麻疹と言います。
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1.急性蕁麻疹
急性蕁麻疹は、「体調が悪く、たまたま食べ物や薬が合わなかったのが原因」と言われることがよくあります。実際にそのような理由で生じていることもあるのですが、最近の研究では細菌感染やウィルス感染の関与が指摘されています。風邪をひいた時などによく蕁麻疹が出現するのはこのためと考えられます。
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2.慢性蕁麻疹
慢性蕁麻疹は、何らかのアレルギーが原因(食べ物、花粉、薬剤等)と考えられていますが、原因の特定が難しいというのが現実です。疲れやストレスが原因だったり、増悪因子であったりすることが多く、これらの解決とともに蕁麻疹がおさまるということがよくあります。
慢性蕁麻疹には、起こしやすい体質というものが存在します。爪などで皮膚を引っ掻くと、ミミズ腫れを起こしやすい人です。このミミズ腫れがまさに蕁麻疹で、赤色描記(人工蕁麻疹)と言われます。
治療
蕁麻疹を起こすもとになっているヒスタミンを抑える薬(抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬)の内服が基本的な治療です。これらの薬には相性があり、人によって良く効く薬とあまり効かない薬があります。相性の良い薬がわかるまで、いくつか変更して試さなければならないことがあります。うまく蕁麻疹が抑えられれば、しばらく内服し、症状が出ないようなら少しずつ薬を減量し、いずれは中止するのが目標です。
これら抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬には、眠気やだるさといった副作用があります。車の運転などには十分な注意が必要です。また緑内障(視野が狭くなる眼の疾患)や前立腺肥大(尿路が狭くなる泌尿器の疾患)などの症状を悪化させてしまうことがあるので、これらの既往のある人は注意が必要です。これらの既往があり、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬のリスクが高く内服できない場合や、これらの内服だけでは蕁麻疹がうまくコントロールできない場合、漢方治療が効果的なことがあります。症状や皮疹の性状、体格や体質に応じて東洋医学的に判断し処方を決定します。