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お肌の基礎知識

vol.40 傷は乾かしてはいけない

ケガで生じた傷、特に すり傷(挫傷や擦過症)は乾かせば早く治ると思っている人がたくさんいます。あたかも一般常識のように思われています。
しかし、実際は 「傷は乾かしてはいけない」のです。早く、きれいに傷を治すには決して乾かしてはいけないのです。

何故?

すり傷を乾かすと痂皮(かさぶた)ができます。十分に傷が治るとこの痂皮ははがれ落ちます。しかし、まだ治っていないのに無理にはがすと、出血しやすいジクジクしたなま傷が姿を現します。つまり、痂皮の下には湿潤な傷が存在し、いわばこの湿潤な傷を痂皮が覆うことで乾燥を防ぎ傷が治る環境を作っているのです。そして傷が治ると、必要のなくなった痂皮がはがれ落ちるのです。ということは、最初から傷を乾かさずに 湿潤な状態に保てば、痂皮をつくる手間を省いて早く傷が治ると言うことになりませんか?早く傷が治れば、それだけ瘢痕を少なくするのできれいに治るのです。
また、すり傷などの表面には、傷の再生に必要な 表皮細胞や 線維芽細胞などが多数存在しています。細胞が生きていくには水分が必要です。ですから乾燥するとこれらの細胞は死んでしまいます。結果的に傷が治りにくくなります。またこれら表皮細胞や線維芽細胞は、 サイトカインという傷が治るのに必要なホルモンのようなものを分泌します。乾燥した環境ではこのサイトカインの効果は発揮されません。
以上のような理由で、「傷は乾かしてはいけない」のです。

では、どうしたら良いのか? 

  • 1.外用剤(抗生物質軟膏や潰瘍治療剤)をたっぷり塗る
    すり傷が乾くのを防ぐには、外用剤を多めに塗ることです。主に抗生物質軟膏が用いられますが、深い傷には潰瘍治療剤を使うこともあります。これらの第一の目的は 創面を湿潤に保つことと思っても良いでしょう。そしてこれら外用剤本来の目的である感染防止と治癒促進効果が加わり、傷は早く治ります。
  • 2.傷にくっつかない被覆材を用いる
    最近はいろいろな被覆材が開発されて、傷にくっつきにくいものも市販されています。 被覆材が傷にくっつくと、はがす際に再び傷を作ることになり治癒が遅れます。一般的にガーゼは水分を吸収し乾燥させやすく、しかも傷とくっつきやすい特徴があります。ですから、ガーゼはすり傷を覆うものとしてあまりお勧めできません。しかしながら、先に述べた外用剤を傷に多めに塗れば、傷にくっつくことなく使用することができます。うまく使えばガーゼでも構いません。

軽症のすり傷であれば、以上のことを参考にして自分である程度対処できますが、意外と深い傷だったり、感染したりすると手に負えなくなることも多くあります。必要な外用剤の処方や処置の方法の指導などを含めて、より早くきれいに傷を治すには医師のもとでの適切な治療が必要です。