もう四半世紀前になりますが、学位(医学博士)を取るために皮膚がんの研究をしていました。マウスの皮膚にできた皮膚がんを解析していたのですが、顕微鏡で生じた皮膚がんを観察すると、形がいびつで細胞核が複数あったりやたらと細胞分裂していたりする様子を見ることができます。しかもがん細胞は大きく、気持ちの悪い存在感を持っています。
先日、がん細胞がいかようにして正常の細胞の中に分け入って己を増殖させ「領地」を獲得していくのか、を解明したとする論文が出されました。大阪大をはじめとする研究チームの論文です。
要約すると次のようになります。
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ある時何らかの原因で前がん細胞(本格的ながんになる前の細胞)が生まれます。しかしながら元々ある正常細胞はお互いに隙間なく隣接し合っているため、前がん細胞は好き勝手に己の領地を広げることができません。そこで、前がん細胞は周囲の正常細胞が死ぬように促し、生じた隙間に己を割り込ませより広いスペースを獲得するために自身のサイズを大きくします。さらに正常の細胞より早い細胞分裂によっていつの間にかがん組織(がん細胞の集まり)を作ってしまいます。
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前がん細胞が正常細胞の間に入り込めないようにできれば、がんの初期段階での抑制が可能になるかも知れません。それにしてもわかってはいましたが、がん細胞はずうずうしいですね。てきれば撲滅したいです。
Competition for Space Is Controlled by Apoptosis-Induced Change of Local Epithelial Topology
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<15/07/2018 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>
ずうずうしいがん細胞