最近寒い日が続いています。真冬日(最高気温が氷点下)の連続です。
寒い日が続くと、特に冷え性の人はしもやけや凍傷になりやすいので注意が必要です。実際、足先が紫色になって痛みを訴える人が多く来院されます。でもお話を聞くと、みなさん冷やさないように注意しているようです。季節、体質(冷え性、足が蒸れやすいと熱を奪われ冷たくなりやすい)、仕事の環境(外にいる時間が長い)、糖尿病や閉塞性動脈硬化症などの病気を持っているなど、しもやけになりやすい原因はさまざまです。注意していてもしもやけになってしまうこともあるのです。
・・・・・・・・・・
さて、南極の氷原を愛くるしく足りまわるペンギンの姿をよく映像で見ますが、ペンギンの足が凍傷になるという話を聞いたことがありません。ペンギンや、凍った池や湖を歩いたり泳いだりするカモなど、どうして彼らは平気なのでしょうか。
・・・・・・・・・・
私たちの体を覆う体表臓器である皮膚には、外界からの刺激から身を守る役割を担っています。例えば、水分の喪失を防いだり、様々な病原体の侵入を防いだり、紫外線から身を守ったり。そして忘れてはいけないのは、一定の体温を維持する体温調節という大切な役割です。
皮膚による体温調節には、大きく二つあります。一つは血流のコントロールによる体温調節、もう一つは毛と汗による体温調節です。このうち血流のコントロールによる体温調節とペンギンが凍傷にならない理由の間に、深い関係があります。
暑いときは、皮膚に存在する毛細血管が拡張して、熱を体表から逃がそうとするため、顔が赤くなるなど体表が赤くなります。一方寒いときは、血液から熱が奪われないように毛細血管が収縮して体表は白っぽくなります。このとき血管が収縮したまま血流が悪くなると、組織が虚血になりしもやけや凍傷を起こします。
・・・・・・・・・・
ペンギンも同じなのでしょうか。実はペンギンやカモ、寒い地域に生息する白鳥や鶴などの足の皮膚には、温かい血液を心臓から運ぶ動脈の周囲に、足先で冷えたけ血液を心臓に戻す静脈が網目のように巻き付いた「ワンダーネット」と呼ばれる構造が存在するのです。これによって、足先から戻ってきた冷えた血液は、「ワンダーネット」内で心臓からの動脈の温かい血液によって温められてから心臓にもどり、逆に、温かかった動脈血は、「ワンダーネット」内で熱を奪われて冷え、冷たい血液となって足の方に運ばれて行くのです。結果的に血管を収縮させる必要がないため虚血にならず、しもやけや凍傷になることはありません。
・・・・・・・・・・
可愛いペンギンの足の皮膚に、こんな仕組みがあったなんて驚きです。
まだまだ寒い日は続きます。しもやけにならないよう気を付けましょう。
・・・・・・・・・・
<30/01/2018 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>
なぜペンギンはしもやけにならないのか。 (皮膚科情報)