4月は、入学、就職、引っ越しと新生活が始まる時期で、手を使う頻度や環境の変化などにより手湿疹が生じたり悪化したりする時期でもあります。実際「手がこんなになったの初めて」「今までになく悪化した」と訴えて来院される方が多い印象があります。
手湿疹の原因に関しては先日のブログ(https://www.m-skin.com/archives/2198/)で解説しましたが、今回は手湿疹の臨床像と治療に関して考えたいと思います。
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手湿疹には症状の上で次のように分類されます。
①再発水泡型手湿疹(汗疱型手湿疹、異汗性湿疹):手掌や手指側縁に”小水疱が多発”する。小水疱は激しい炎症を意味し、強い痒みを伴う。収束してくると水泡は乾燥し落屑(らくせつ;皮がむけてくること)する。夏期に多い傾向があるが通年見られる。原因は明らかでないことが多い。
②角化型手湿疹:”境界のはっきりした厚い鱗屑(りんせつ;厚くなった皮膚が剥がれてきたもの)”が手掌に見られる。亀裂を伴うことがある。原因は不明なことが多い。
③進行性指掌角皮症:指先や指腹が乾燥して荒れ肌となり、時に指紋が見られなくなる。”利き手に好発し”亀裂を伴うことがある。皮膚バリア機能の低下が悪化の原因となり、繰り返す水仕事や頻繁な手の使用など様々な刺激が誘因となる。最も頻度の高い手湿疹。
④貨幣状手湿疹:いわゆる”ジクジクした印象”の手湿疹で、手背や指背に類円形の湿疹が生じたもの。痒みが強い。
⑤乾燥・亀裂型手湿疹:手掌や手指”全体の乾燥と亀裂”が特徴の慢性手湿疹。冬期に悪化することが多い。
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治療はステロイド外用剤の使用が基本ですが、乾燥に対してはヘパリン類似物質や尿素系軟膏の併用が効果的で、角化が強い場合はサリチル酸ワセリンが有効です。貨幣状手湿疹などジクジクした湿疹には亜鉛華軟膏が効果的で、亀裂に対しては、亜鉛華軟膏やステロイド含有テープ剤が使用されます。手の皮膚は厚くまた手湿疹は炎症が強い場合が多く、比較的強いランクのステロイド剤が必要になります。
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手を使わずに生活することは現実的に困難です。言い換えれば”手を使う以上ある程度は避けられない”のが手湿疹です。「悪化を防ぎ少しでも改善し良い状態を保つ」ことを治療の目標にするのが大切です。
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<09/04/2017 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>
最も身近な皮膚疾患・手湿疹について考える その2 (皮膚科情報)